失われた音を求めて 調音ボックス「韻(HIBIKI)」
置くだけで効果を発揮するルームチューン・アクセサリー
アスカオーディオの韻(HIBIKI)(調音ボックス)
その長大さゆえに読むのがためらわれる、マルセル・プルーストの超長編小説「失われた時を求めて」は、「プルースト現象(効果)」という言葉で、その存在をよく知られています。
主人公が紅茶に浸したマドレーヌを口にした途端、その香りから懐かしい子どもの頃の記憶を思い出すという描写から、特定の香りがそれにまつわる過去の記憶を呼び起こす現象のことをいうのですが、嗅覚が脳を活性化させることは、最近の研究で科学的に確認されているそうです。
私感ですが聴覚にも同じような現象はあるみたいで、古いレコードを再生したら若い頃つき合っていた恋人とのあれこれがフンワリ蘇ったとか、BGMで流れていた曲によって、記憶の奥の方に仕舞っておいたはずの嫌な記憶を無理やり掘り返されたとか。
開発したアスカの浅井氏によると、以前から自社で使用している後面開放型のスピーカーボックスに「木炭」を大量に充填、音質改善効果が得られることを以前から実感していたという経験則があり、この特許セラミックカーボンを開発した (株)アスカムというメーカーに出会って、共同開発によるオーディオルームチューンアクセサリー 韻(HIBIKI)発売に至ったのだそうです。
ルームチューンを謳ったアクセサリーは、設置や使いこなしが難しいものが多いですが、この 韻(HIBIKI)は、オーディオシステムの周りやリスニングルームの壁際やコーナーなどに置くだけで効果を得られます。外装は硬質の紙で軽いので、壁面にプッシュピン程度のもので取り付けられる穴も空いています。地震で落下して頭に当たったとしても、たぶん大丈夫です(自己責任で)。
後日、製品が届いてとりあえずスピーカーセットの前に梱包を解いたとき、左チャンネルスピーカーのすぐ横に設置してあるテレビから出ていたいつもの音が見事に改善されていて、思わず笑ってしましました。
韻(HIBIKI)は1セット6本入りで、当方のオーディオシステムは設置場所がマンションのリビングルームの片隅という制限があるため、画像のようにすべてエール音響ホーンスピーカーシステムの近くに設置しています。 エール音響ホーンシステムの近く左右それぞれ3本ずつ設置したときの音は、前述の印象をさらに深めたもので、音場空間のリアリティが上がりました。以前マンションをリフォームするまで、「マイ電柱」で知られる出井電気のオーディオ専用分電盤を使っていたことがありますが、その時の音の改善に近い感じ。余計な音を吸い取ってくれるみたいに、音のアバレがなくなります。
25畳のオーディオルームに28本の 韻(HIBIKI)を導入され、 すばらしい成果をあげられた方もいらっしゃいます。
ネットで調べると、活性炭はスピーカーボックスの充填剤としていろいろ使われていて、スピーカーメーカーの KEFには「Acoustic Compliance Enhancement」という技術で、スピーカー内部に粉体カーボンを充填させた製品がありました。松下電器産業は十数年前に「ナノベースエキサイター」というナノサイズ多孔質カーボン素材を使って、エンクロージャー内部の空気分子密度をコントロールする技術を発表していました。
オーディオマニアのブログには、活性炭どころか「炭」そのものをエンクロージャーに充填したり、果ては冷蔵庫脱臭剤「キムコ」をエンクロージャー内部に積み上げたり、松下電器産業も「ナノベースエキサイター」開発にあたって最初は「キムコ」から始めたそうです。
この 韻(HIBIKI)を導入したあとの聴き込んだ印象として、ルームチューンはもちろんのこと、特に低音の吸音に効果がありそうだと感じました。前述した KEFの「ACE技術」にしても、松下電器産業の「ナノベースエキサイター」にしても、小型エンクロージャーやテレビの低音増強のためにカーボン素材を使っているわけで、たぶんこの判断は間違っていないと思います。試しに 韻(HIBIKI)をシステムの裏側に集中的に設置すると、背後に発生する無駄な低音の回り込みがかなり解消されます。そこで、現在ウーハーボックスの内部に入れてある 芦沢式レゾネーターの替わりに、この 韻(HIBIKI)を充填する計画を立てています。
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